確かに一昨日の件に関して、あたしから氷室さんに全く話していないのも事実だけれど。

氷室さんは本当に、何も知らない訳?
隼人も世奈も、何にも彼に伝えていない?

どんなに考えても、自己解決なんてできるはずもなくて。その上、二人が仲良く仕事をしている様子を目の当たりにし、何だかとても気持ち悪くなった。

高まる鼓動を落ち着かせるため、そっと廊下の壁に背を預ける。過ぎていく人の中には、不思議そうにあたしを見る人もいたけれど、気にせずに数回深呼吸をした。

そしてもう一度視線を投げたその先に、案の定彼らの姿はもうなくて。

安堵しているのか悲しんでいるのか、よくわからない気持ちを吐き出すように小さく息を吐き、ブレザーのポケットから携帯を取り出す。

開いたディスプレイに表示された時間を見て、思いの外時間が経っていたことを知り、世奈がまだいるであろう体育館に戻ることにした。