―――学校祭、本祭二日目。

今日はあたしのクラスの演劇発表がある。あれだけ焦っていた大道具も、あたしの知らない間に完成したらしく、舞台の上に華々しく設置されていた。


「……あれ? 紫音、演劇見ないの?」


舞台袖の控えスペース、そこからそっと抜け出そうとしたあたしを目敏く見つけた世奈が、不思議そうにそう問いかけてきて。


「うん。何かちょっと気が向かなくて。みんなには悪いけど、あたし校内ブラブラしてるわ。」


しかたなしに振り返り、申し訳なさそうにそう言って笑えば、刹那、世奈の顔に呆れたような表情が浮かんだ。


「全く…。相変わらずマイペースだこと。
………じゃあ、気をつけて。」

「あはは、わかってるー。」



冗談半分で返したけれど、何に気をつけるのかなんて明らかで。小さく手を振る世奈の顔に、心配の色が見え隠れしていたけれど。最低限のことにしか気づかないフリをして、その場をあとにした。