でもそんな弱さ、今は世奈にも見せたくなくて。何とか動揺を隠し、必死に笑顔を繕う。


「……まだ、話してないけど。何かさ、忙しそうで話しにくいっていうか…。だから明日、学祭が終わったら話しに行こうと思ってる。」


苦笑を零しながらそう言えば、世奈も納得したように微笑を浮かべる。そして、机上に置いてあった自身の紅茶に一口口を付け、何か思案するような表情で再び口を開いた。


「そっか。……それにしても副会長、大人しそうに見えて危険人物だったのね。しかもあの噂が、ここまで本当だったなんて。」


あの、噂――…

あたしが氷室さんに確かめたときは、鈴木さんには何一つアプローチされてはいないと、二人の関係はきっぱり終わっていると、確かに言っていたのに。

思い起こされる様々な記憶と交錯する気持ちの中、渦巻くのはやっぱり不安ばかり。

だけど明日。明日になればきちんと、氷室さんと向き合える。彼が不安を吹き飛ばしてくれる。そう信じて疑わなかった。