返事をするのもやっとだった。

 胸の辺りに違和感を覚えて恵里を覗くと、マスカラを気にしながらボロボロと涙を流している。

「えっ、ちょっと、泣くなよー」

「何よ、さっきは笑うなって言ったくせにっ」

「それとこれとは別だろ」

「もう、マジ意味わかんない」

 結局恵里はしばらく泣きながら笑い、俺はそれをあやしながら幸せを噛み締める――……様子をしっかりと原&サオリに見られていた。

「お前ら、そういうのは家に帰ってからにしろよ」

「ごちそうさまー」

 顔の温度は急上昇。

 だけど俺は恵里を抱いたまま言ってやった。

「バーカ。うらやましいからって僻むなよ」

「ちくしょー腹立つな。もう勝手にしろよ」

 原はズカズカ階段を降りていき、それを見て笑うサオリも後に続く。

「帰ろうか」

「うん」