恵里は一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、それから大爆笑。

「笑うなよ」

「だって、歩……バカじゃん。マジで」

 尚も笑う恵里は俺の腕に巻き付いて、チュッと頬にキスをした。

「好きでもないのに、こんなに毎日尽くすわけないでしょ」

「でも俺ヘタレだし、何もしてやれないし」

「あのね、あたしたち何年の付き合いだと思ってんのよ。あんたがヘタレてることくらい、ずーっと前から知ってるっての」

 やべ、周りに人がいるけど思いっきり抱き締めたい。

 腕だけじゃ足りない。

「これからずっと、何年何十年先も、朝は起こしてあげるしご飯も作ってあげるから――……」

 俺はとうとう我慢ができず、恵里を自分の体に閉じ込めた。

「……――絶対幸せにしてよね」

 愛しくて苦しい。

 俺のヘタレなハートでは気持ちを持て余してしまう。

 Tシャツ越しに感じる恵里の体温が、夜風に奪われるのも惜しいほど。

「約束するよ」