窓と窓の間に、湿った6月の空気が漂う。
「帰るぞ。準備しろよ」
「え、帰るってどうやって……っていうか歩、どうやって来たの?」
「友達の車。コンビニに待たせてある」
「マジで? やだ、なんか申し訳ないじゃない」
恵里はそう言ってバタバタ準備を始めた。
俺は一足早く外で待つことにしよう。
靴を履いていると、寝間着の母さんが出てきた。
「あらもう帰るの?」
「うん。恵里を迎えに来ただけだからさ」
母さんは「ふーん」とにやけながら俺を送り出した。
親に痴話ゲンカを覗かれるのって、恥ずかしい。
逃げるように実家を出た俺は、桐原家の塀に寄り掛かって恵里を待った。
今日は星がきれいだ。
そういえば昔、夜に二人で家を抜け出して公園へ星を見に行ったこともあったな――……。
「お待たせ」
恵里は化粧をして家から出てきた。
「おう」
恵里の笑顔を見ると、俺は急に泣きそうになった。
「どうしたの?」