「――うちのブランドのモデルをやることになったの」



 ……え?

 唖然とする俺に、恵里は更に喋り出す。

「歩が見た男の人、桐原サトシさんていうんだけど、ポスターとか担当してる人なの。打ち合わせのためにわざわざ東京から来てくれててね――」

 同じ桐原だから名前で呼んでたのかよ。

「今まで帰りが遅くなってたのは、撮影とかの打ち合わせでね。7月9日から東京でやる予定なんだけど、歩の誕生日とかぶるから日程を無理に調節してもらってて……」

 言いたくない仕事って……モデルだったのかよ。

 意味わかんねぇのは俺の方だ。

「じゃあ、帰りが遅かったのも男と頻繁に会ってたのも……俺の誕生日のためってこと?」

 こくりと頷いた恵里を見て、全身の力が抜けた。

 床に膝をつき、窓枠に寄りかかった。

「何だよ……」

 悩んでた自分がすげーバカみたいだ。

「黙っててごめんね、歩」

「もういいよ……俺が悪かったんだし」