何もできない俺に、何でもしてくれる恵里。

 自分だって仕事があるのに、ヘタレな俺を守ってくれている。

「何よ急に……意味わかんない」

「思ってることだよ。恵里が言えって言ったんだろ」

「そうだけど、こんな時に、なんか照れるし」

 グスッとまた鼻をすする音が響く。

「それと、ごめん」

「何がよ?」

「俺、ずっと恵里を誰かに取られる気がしてて……昨日も、男のとこに行ったと思ってた」

「バカじゃん。一緒に住んでるのに……」

 恵里は一旦言葉を止め、頭をポリポリ掻いた。

 そして「あのね」と俺の意識を引き付け、視線を落とした。

 胸がざわつく。

「隠してることがあるの」

 ドクッ……

 隠してること?

「何?」

 やっぱり、男か?

 恵里は自分を奮い立たせるように手を動かし、俺の顔を見て窓に手をついた。

 何でもいい。

 だから早く言えよ……。

「あのね、実は――……」