今思えばかなり失礼だったと思うが、教養のない恵里には何もできないだろうと高を括っていた。
だから賢い俺が彼女をリードしよう、なんて思っていたのに……。
全然違った。
何もできないのは俺の方。
料理もダメ、掃除は面倒、更に一人では起きれない。
俺にできるのは渡されたゴミを所定の場所に運ぶことだけ。
子供だ。
恵里は数学が苦手だったけど、今では生活費の管理だって立派にやっている。
バカ女!
なんて昔はよく言っていたが、もう口が裂けても言えない。
そんな彼女に惚れ直す一方で、俺はどんどん自信喪失していた。
「西山、エラいよな。毎日ちゃんと1限から来て」
と、よく大学の友人から褒められる。
「まーな」
なんて言ってみるが、俺の力ではない。
恵里が毎朝ケツを叩いてくれるから成し得ているのだ。