バタン、とドアを閉めて俺は蹲った。

気持ちが悪い
吐きそうだ…

嫌な汗が背中をつたう。
今、俺の中にあるのは“帰れないかもしれない”と言う恐怖だった。
もう二度と家族に会えない恐怖。
もう二度と友人に会えない恐怖。
とにかく怖かった。


「っ…はぁ…何やってんだよ、俺。」


俺は床をドンと力任せに叩いた。
痛みだって感じてる。
夢じゃない。
俺はこの世界に生きていて、この世界は俺が生まれ育った世界なんかじゃない。


「リアを迎えに行かなきゃ。
置いてきちまったし…」


そう思って立ち上がろうとした時だった。
ゴトッ、と言う音とともに何かが床に落ちた。


「これ…」


思わずそれを拾い上げて俺は固まった。
俺の手の中にあったのは、間違いなくあのときの日記だったからだ。


「やばっ、持って来ちゃったじゃん。」


言葉ではそう言っていても、俺はいつの間にかその手帳に触れ、そして開いていた。
名前は書いていない。
それに年数も。
一体、この手帳を書いた人は誰なのだろうか。
そして、何故俺がこの手帳を見つけたのだろうか。