「…実は、これ俺達の世界の言葉なんだ。」
「じゃぁ、読めるの!?」


リアの言葉に俺はゆっくりと頷いた。


「なんて書いてあるの?」
「えーっと…」


俺はパラパラと本をめくり本を読んでみた。
どうやらそれは日記らしく、楽しかったとか辛かったとかが書いてあった。
だけど、後半の方になるに連れて、文字は雑に、そして悲観的な言葉になっていった。

最後のページにはただ一言

「帰りたい」

と紅い文字で書かれていた。


「っ!!」


俺は思わず日記を閉じてしまう。
この日記を書いた人間は…いや、日本人は…
きっと帰れなかったんだ。
そして、ここで命を落とした。
あの紅い文字はきっと血文字。
血文字なんて見たことがなかったが、なぜか、俺の本能はあの文字を血文字だと感じ取ったのだ。


「どうしたの?」


リアが俺を心配そうに覗き込んだ。
俺は、無理矢理笑って“なんでもない”と言うことしか出来なかった。


「リア、悪いけど…ちょっと気分が悪いんだ。
俺、戻っても良いかな?」
「え、あ…うん。そろそろ時間だしね。」


俺の言葉にリアは頷き、立ち上がった。
しばらくすると、空間にドアが現れ、館長が迎えに来た。
俺は館長の脇をすり抜けると
逃げ出すように図書館を後にした。