“ない”

たった一言がこんなにも重いだなんて思わなかった。


「ない…ってどういう、ことなんだ……?」


やっとの思いで言葉を搾り出せば
リアは首を振った。


「ページが…無くなってる。
誰かに破られてるの…」
「……。」


何も言えなかった。
これで、俺が元の世界に帰る手がかりは全く無くなってしまったんだから。
俺はその場に座り込み、床をドンと叩いた。


「ッ!!
イチ…ごめんなさい……。」
「あ、や…リアに怒ったわけじゃなくて…」


床を叩いた音が予想以上に大きくてリアがビクリと動いた。
きっと俺が怒っていると思ったのだろう。
俺が謝ったリアに、慌てて言い訳をしてもリアの表情は晴れなかった。


「私の所為だよね。」
「…いや、あの…」
「私の所為ってイチ言ったよ。」
「だ、だから、それは…」


今にも泣き出しそうで、俺は戸惑うばかり。
こんな時、彼女とかがいればリアへの対応もましになったんだろうけど
彼女とは結構前に別れたっきり。
女の子の慰め方なんて…

そう思ってたのに、体は勝手に動いてた。