「じゃあさ、わたしとつきあってみない?」


肩口の髪をはらい、小悪魔的な流し目で告白。


円城寺くんの表情は変わらない。


せみの声がけたたましく響くなか、たっぷりと間を置いてから、ようやく彼は口を開いた。


「本気?」

「うん。わたしね、前から円城寺くんのこと気になってたの」

「小松さんの今後のためにも忠告しておくけど」


ここでまたひとつ間を置くと、彼は両手を腰にあてて大きく息を吐きだした。


そして、次に口にした言葉がわたしの人生を変えた。


「身のほどをわきまえたほうがいい」


なにより、憐れみと侮蔑の入り混じった彼の瞳が忘れられない。


自分を見つめなおすには十分すぎるひと言だった。


それまでのわたしは、まったくと言っていいほど自分に無関心で、容姿など気にもしていなかった。

陽気で快活なわたしのまわりにはいつもたくさんの人があつまり、気がつけば自然とクラスの輪の中心にいる。

自意識が足りない要因はそこにあったのかもしれない。


毎日が楽しければいい、ただそれだけだった。

あの日、円城寺くんに告白するまでは。


わたしはそのとき初めて知ったのだ。


自分が並はずれたブスだということを――。