そして、リョウが私の顔を見るのと同時に、耳の横でドンッという音がした。


私はびっくりして首をすくめる。


リョウはドアに両手をついたのだ。



「何もない事はないだろう?」


リョウは私の顔を見つめながら、落ち着いた低い声で私に言う。


私は前を見る事が出来ないでいた。



それに、リョウの腕で逃げることが出来ない。


そんなに怒らないでよ・・・。


私、悪い事してないよ?



私は観念したようにリョウの目をすがるように見つめた。


するとリョウは、いつもの優しい顔に戻り「早く部屋へ入ろう?」と言った。


私は何回も横に首を振る。



「やだ!私、隆志の部屋へ行くの!」


私はリョウの言う事を聞かなかった。


これじゃあまるで駄々をこねている子供みたい。



「兄さんいないんだろう?」


リョウは隆志の部屋の窓を見る。


隆志の部屋は電気が点いていない。


だから、隆志がいない事もわかるはず。