教室を出ると、丁度隣のクラスから友達の貴が出て来た。




「あ、明弥!」




大声で俺の名前を呼んで貴は手を振りながら近づいて来た。




「どうしたの?もしかして次の授業サボり?」




そう言ってニコッと微笑む。




その笑顔は俺の意味の分からない苛々を消していった。




こいつみたいに……優しく笑えたら。




こいつみたいに……優しい言葉をかけられたら。




こいつみたいに……場を和ませられるくらい大人だったら。




あいつを怖がらせる事もなかったのかな。




不意に相武の顔が脳裏に浮かんだ。




ボーっと考え込んでいると、貴は俺の顔を覗き込んできた。




「明弥……?」




「あ……」