ここで叫ばれたりしたら困る。
「………、」
「鉄のにおいがする……」
俺が口を開く前に少女が近寄ってきた。一歩後ろに下がる。
少女は、俺の前に立つと、じっと俺を見つめた。
「お兄さん、怪我してる?」
「…………ここで俺と会ったことは忘れろ」
低い声で言えば、少女の肩が震えた。
見られてしまったら仕方ない。本来なら消すべきかもしれないが、少女はなにも悪くない。無駄な殺生はしたくなかった。それに何よりそんな力今の俺には残っていなかった。
血を流しすぎたか、視界はグラグラ揺れている。ヤバい。連絡はしたから来るまでどこか安全な場所に―――。
「………何のまねだ」
「倒れるよ?」
歩き出そうとした俺の服を少女は掴む。