自然と足がそちらに向いた。
こんなことしている場合ではないのに、己の意志に反して体は動く。


木々の間を通ってたどり着いたのは小さな空間だった。
公園の中のはずだが、その場所だけ神聖な雰囲気を漂わせている。
その空間には、一人の少女がいた。制服姿のその少女は、気持ちよさそうに音を奏でていた。


………なんて綺麗な歌声か。


少し高めの声だが、透き通っていて聞いていて心地の良いものだ。ずっと聞いていたくなるそんな音だった。


しばらく呆然とその場に立ち尽くしたまま少女を見ていた。


少女がふいにこちらを向いた。バチッと視線が交わる。


「きゃっ人っ」


少女は驚いて音を奏でるのをやめてしまった。少し残念に思いながらもしまった、と今の自分をかえりみた。


傷だらけで明らかに"裏の世界の人間"だ。