油断していた。


否、認識が甘かったんだ。自分の立ち位置がどこにあるかを。


「………チッ」


小さく舌打ちをして、俺は近くにあった公園へ足を踏み入れた。時々後ろを確認しながら痛む肩を抑える。


相手は単独だった。
きっと追っ手は来ないだろう。


広い公園を歩き、茂る木々の中を進む。公園なのに森みたいだなと思った。


とりあえず、誰にも見つからない場所へ。


そう歩いていると、耳に小さな声を拾った。


「歌……?」


耳を澄ませると音になって空気を伝わってくる。