「なんで?」


奴の手から離れて美空が俺に歩んでくる。その手には銀色に光るナイフ。


「理由………貴方は知らなくていいよ」


ナイフをちらつかせながら美空はゆっくりと歩いてくる。


「あたしは、貴方が死んでくれたらそれでいい………」

「……っ」


ズキッと心が痛んだ。ピシリと見えない何かに亀裂が走る。


「簡単だったよ、貴方の近くに入り込むのは」

「………美空」

「組の人も騙すの簡単だった」


あんなにあっさりあたしを信用しちゃうんだもの。
クスクスと笑う美空………どうしてそんなに悲しそうに笑うんだ……


「本当に、全部が芝居だったのか?」


掠れた声が俺の口から音になる。
喉がカラカラに渇いている。