正確には美空の歌に誘われた俺が悪かったのだが。


傷が深くて血も流しすぎ気力も無くなっていた俺は、口封じに殺そうと思ったが出来なくて………まぁ平和主義だし。


「あたしもビックリしたー。血塗れだったもんね」

「普通なら血塗れだったら悲鳴でも上がるはずだがな」


普通なら、と強調して言うと、あたしはどーせ普通じゃありませんよ~と拗ねられた。


お互い冗談で言い合っているから口調は軽い。拗ねたようでも実際は違うと分かっている。


「よっ………うわ、懐かしいー」

「………年寄り臭いぞ」


呆れたように初めて俺達が視線を交わらせた場所のベンチに走る美空を見る。


美空は、俺の言葉を流したのか、ベンチに座った。


「ここで、始まったんだよね」