刹那、その顔が悔しそうに歪んだ。
下を向いて、ギリッと唇を噛み締め、血が出るんじゃないかってくらいに強く手を握り締める。


「美空、何して」

「………龍さん、ちょっと寄りたいところがあるんだ」


しかし、次に顔をあげた時はいつもの美空に戻っていて、にっこりと笑う。


「寄りたいところ?」

「うん。ここから結構近いから」


行こう?と美空は、自分から俺の手を掴むと俺を引っ張るかのように歩き出す。


されるままになりながら俺は美空を見るが前を向いていて今の表情を確かめることはできない。


「………ごめんね、龍さん」

「?」


いきなり謝罪を口にする美空。


「どうした」

「何となく!」


勢いよく振り返り笑う美空は、今にも泣き出しそうだった。