しかし、俺は、一歩も動かなかった。
何時まで経っても動かない俺に炯は痺れを切らした。


「若、いい加減に、」

「炯」


炯の言葉を遮って俺は、名前を呼ぶ。何時もの呼び方じゃなく、少しだけ言い方を変えた。
それを聞き分けられない炯ではない。


「………なんですか」

「今日は歩いて帰るんだ」


じっと炯を見つめた。
お互い睨みあっていると、先に折れた炯がため息をつく。


「………分かりました。」

「炯さん!?」


まさかの事態には和也が声をあげる。


「すまないな」

「しかし、お二人のみで、は聞き入れられません」

「そうだな………俺達だけで帰ろうか」


俺は、炯の言葉を無視して美空の横に立った。
下を見下ろすと、頭一つ分と少しだけ低い位置に美空の頭がある。