――――美空だ。


美空の周りには、護衛の和也と優斗の他に数人集まっていた。恐らく学の知り合いだろうと思われた。


だんだんと近くなるにつれて姿がはっきりしてくる。
他愛もない話をして居るのだろう、楽しそうに美空は、笑っている。


―――その笑顔が俺だけに向けられたらどんなにいいか。


ゆっくりと速度を落として、車が止まる。車が止まったのに美空達は気づくと、学の知り合いは美空に手を振り、帰っていった。


頃合いを見計らって、俺は車から降りた。


「若っ」

「お帰り、美空」


慌てて俺を車に戻そうと名前を呼ぶ炯を後ろに、俺は美空の方に歩み寄った。


まさか、俺が出てくると思っていなかった和也と優斗も僅かに焦りを見せ、周囲に気を張る。