「奪われたら奪い返せばいいだけです」
そう笑う炯だが、目は笑っていなかった。
「あぁ………そうだな」
「私は、これから、電話の相手など調べます。若は、美空さんを護ることに専念してください。」
「炯」
「あの人は、若の側にいるべきなんです」
ポツリと呟く。
「?」
「あ、でもちゃんと仕事もしてくださいね?」
かけているメガネを押し上げながら意味深な発言をする炯に俺は首を傾けるだけだった。
「美空!!」
高天場の倉庫につくと車が止まっていた形跡が幾つもあり、まるで先導するかのように大きく扉が開かれていた。
急いで車から降り、倉庫の中に走り込むと、地面に倒れている美空の姿を発見した。