「…………」

『もしもーし?聞いてる?』

「あぁ」

『で、譲ってくれるの?』


楽しそうな勝ち誇ったような声に、屈したくはないが、美空のためだ。
しかし、仲間の犠牲を無駄にするつもりか………
葛藤が胸の中で渦巻く。


『早く決めないと大切なもの、壊しちゃうよ?』

「っ」

『この子、気強いねー。殴っても殴っても睨んできやがる』


泣き言一つ言わない。
男の言葉に俺は腸が煮えくり返った。
殴った、だと?………殺してやる。


「貴様………」

『そろそろ、泣き顔がみたいなぁ』

「…………」

『どうする?』


糞野郎。


ギリギリと歯を食いしばっていると、すっと一枚の紙が横から滑り込んできた。
思わずそれを見下ろして、その紙に書いてある字を目でなぞった。