学校に美空を送り、和也と共に校舎に入って行くのを確認してから車を出す。


向かうのは、港。
港には沢山の使われていない倉庫があるから取引にはうってつけの場所だ。


「………そういえば、若」

「なんだ?」

「最近、澪の姿を見ませんね?」


炯は澪の存在を知る俺以外唯一の人間だ。音もなく現れる澪をいつも叱っているからか、いないと違和感があるみたいだ。


「あぁ……澪は、学校だ」

「はい?」

「仕事がないから暇だって言ってな………美空の学校にいる」

「………大丈夫ですか」


澪の事をよく知る炯が聞いてくる。炯の言わんとするところを理解している俺は、車の外の景色を見る。


「まぁ、大丈夫だろ」

「ですかね?」

「ちゃんと約束はさせた」