「………炯(ケイ)」

「何でしょう」

「すまなかったな」

「………分かればいいんです」


分かれば、と強調する炯の説教はようやく終わったようで、ホッとする。
俺にも負けないくらいに厳つい顔で睨まれたら流石に俺もきつい。


「そういえば若」

「あ?」

「これ、どうしますか」


そう言って炯は、一つの大きめのハンカチ………美空のハンカチを俺に見せた。
それはまだ洗われていないから赤く染まっている。ここまできたら綺麗に落ちないかもしれない。


ジッと、ハンカチを見つめる。
これが唯一美空と俺を繋ぐもの。