美空がいないので、仕事に切り替える。
「逃げたか」
「そのようです………おかしいです」
疑問を持った声を出す炯に目だけを向けた。
「密売の情報は、入手してから時間は経っていません」
「………情報が漏れてた、か」
「その可能性はあるかと」
「今は奴を捕まえるのが先だ」
答えてから俺は車の外を眺めた。
さっき別れたばかりなのに、もうこんなにも美空に会いたくて仕方がない自分がいる。
一分一秒でも離れたくない。
「……はぁ、」
寂しさを紛らわせるために溜め息をついた。ちらっと炯が様子を窺ってくるが、俺は何も言わず、外をただ、眺めていた。