弟に力を貸し、その権力を利用したのは彼の横にいる者たちだ。

 弱気な弟王をその気にさせ、ジェイドを暗殺させようとした。

「私のために……皆、死んでしまった」

 一緒に逃げた近衛隊長は、追手を止めるためその命を投げ出し、側近は国王を守るため身代わりとなった。

「皆、善き者だったのに」

 握られた拳が震える。

「それでも……国が栄えるならば。と、私は身を引く覚悟はあった。しかし、お前のしている事はなんだ!」

 ただ己のために権力を振りかざし、民の生活をかえりみすらしない。

「王とはっ、自らの身を犠牲に民の生活を守らねばならぬ! それをお前は……」

「ヒッ」

 ジェイドの迫力に、弟王は玉座の背にしがみつく。

 そして、追い詰められた男は叫ぶような声でそこにいた衛兵たちに命令した。

「こっこやつらを斬り捨てよ! 我を滅ぼす者どもじゃ!」