こちらが見ているのなら向こうも見ているだろう。

 腕時計を確認し、決められた時間がきて南のA班以外は一斉に建物に走った。

 A班はリーダーを務めるため遅れて突入する。

 建物まで二十メートルをきったところで、

「待って!」

「うっ!?」

「なんだ?」

「えっ!?」

 ベリルの制止する声で仲間は立ち止まる。

「どうしたんだ?」

「怖くなったか?」

 ベリルはそんな声には意に介さず、何かを探るように目を眇めた。

「なんだっていうんだ」

 不満げにつぶやいた男の足元に近づいて片膝を突く。

 何を見ているんだと他の仲間もベリルの視線の先を見やる。

「テグス?」

 金髪に栗色の瞳の、ほっそりとした顔立ちのリッキーが目を凝らすと、男の足に細い糸が少しかかっている事に気がついた。