「ベリル? どうしてここに──」

 扉が開いている事をいぶかしげに思ったアントーニが部屋に入ると、ベリルが一人でいる事に目を見開いた。

「ここに入ってはいかん」

「すみません」

 あれからしばらくは自身の感情に整理を付けるべくふさぎ込んでいたが、数日たらずでどうにか落ち着いた。

 研究チームのメンバーは、自分たちの研究を良しとは思っていない。それは接していればこそ自然と伝わってくるものだ。

 彼らは彼らなりに苦しんでいる。それが解っていて尚も私が苦しめる事など出来はしない。

 彼らは無愛想なりにでも私に愛情を注いでいる。その苦しみからひとときでも解放されるのなら、私は彼らと共にいよう。

 人工生命体の研究理由が生命の神秘を読み解くことだったのか、他の理由があったのかは解らない。

 ベリルに関する資料は全て灰になったからだ。