あの光景の記憶は鮮明であるのに、自身の感情は酷く曖昧だ。

 無言で水槽を眺めていくベリルはふいに、一つの水槽で立ち止まる。それは、子どもと呼べるにふさわしい姿と成長を見せていた。

 ベリルと同じ歳か一つ上ほどだろうか。

 液体に浸された体はとても小さく、瞳は淡いブルーをしており、何も映すことのない目はじっとベリルを見つめている。

 男の子だったのだろう。初めて人と呼べる形はしていても、ベリルのように健康には育たなかった。

 正常な子どもの体格に比べてふた回りほど小さくその体には生前、生命維持装置が付けられていた事が窺えた。

 言うなれば、ベリルの兄であろうか。

 体格だけでなく、頭部が異様なほど小さい。これでは脳の大半がなかっただろう。なるほど、生命維持装置が欠かせなかったはずだ。

 この状態で五年も生きられた事にむしろ驚きを隠せない。