三歳のときに聞かされた真実と、目の前にある水槽とが強く結びつく。

 世界で進められているヒトDNAの解読は終わっていない(ベリルが誕生した数年後に解読は完了した)。

 現段階ではそれを切り刻み、つなぎ合わせて一個の人を造り出す事など不可能に近い。

 その実現のための礎がここにある。

 骨の無いもの。皮膚がなく、心臓が肥大化したもの。足があるはずの部分に手があるもの。

 そのほとんどはすぐに死んだのか、ホルマリンに浸されていた。

 かろうじて生きているものには酸素が送り込まれているものの、酸素を止めれば直ぐにでも息絶えるだろう。

 異様な光景である事に間違いはなく、普通の人間が見れば吐き気を起こす部屋にベリルは無表情に一人、立っていた。

「私の、仲間」

 生きる事を許されない生物。ただ作られては消えるもの。

 私はそれに、何かしらの感情を抱いていたのだろうか。