冷たい鈍色のノブに手を掛けると、いつもはかけられているはずの鍵がかけられておらず、小さなきしみをあげて開いていく。

 不思議に思いつつ、扉の隙間から中を覗く。そこは薄暗く、いくつもの低い電子音が不気味に響いていた。

 その暗さは何かを隠そうという意図ではなく、明るさに敏感なものがあるように思えた。

 まるで狭い水族館のように、青白く光る四角い水槽がいくつも並べられている。

 水槽の一つに顔を近づける。

 それは、今まで学んだ生物とはまるで違った形をしていた。何かに似ているかもしれないし、そうとも言えないかもしれない。

 しかしどこかで見たような、解りやすく言い表す言葉が見つからない。

 強いて言えば、赤子と呼ばれる前の姿に似ている。

 その姿を目にした瞬間、ベリルは理解した。

 これは、もしかすると人間になったかもしれないものだ。