されど、本当に選べずに生まれ出でてきたのかは、未だ解らない部分でもある。

 もしかすると、自らでそこを選んだのかもしれない。

 苦境を乗り越え、自らの魂の輝きを高めるために──

 真実は解らない。しかし、もしそうだとするならば、私はなんだ。作られた器を私自身が選んだとでもいうのか。

「人間か」

 人とはなんなのか。死ぬまで、いや、死んでも解らないのかもしれない。

 ベリルはふと、施設にいた頃の事を思い出す──あれはまだ五歳のときだったか。私は夜中に寝付けず、施設内を彷徨いていた。

 あんなことは珍しいのだが、大きな地震が隣国で起こった前夜だったと思う。

 ふと、施設内には稀な、ノブのある扉に目が留(と)まる。

 自動扉やガラス張りの扉が多いなか、何故かこの部屋だけは無骨なノブがついていた。