ふいに投げられた問いに、ベリルは手にあるグラスを見下ろした。

 かつてのバーボン・ウィスキーはケンタッキー州で生産されたコーン・ウィスキーのことを差した呼称だった。

 世界五大ウィスキーのなかで唯一、着色料の使用が禁止されており現在はアメリカ国内で消費されるバーボンは幾つかの要件を満たす必要がある。

 これはスモール・バッチ・バーボン──ウィスキーと比べると、より甘い香りと味わいを楽しめる。カイルの好きな酒だ。

「何故でしょうね」

 ベリルは琥珀色の液体を揺らす。

 すがりつく少年に、昔の自分と重ねた訳ではない。ただ、彼の手を振り払えなかった。

 ──生まれる場所は選べない。

 それが、怒りと死の連鎖を生み出す要因の一つではある。

 だからといって許される行為ではない。

 その中でも、乗り越えようとする者がいるのだから。