ー篠田、このままの成績じゃ志望校は難しいぞ。一ランク下げたらどうだ?ー


放課後担任に告げられた言葉がこだまする。


あたしだって好きであんなレベル高いとこ志望校にしてるわけじゃない。


けど口から出たのは


ー…いえ、もっと頑張りますー








今日はとてつもなく予備校に行きたくない。


きっと恵に聞かれるんだ。


ーこないだの模試どうだった?あたしはギリギリ合格圏内かなぁ…ってー


恵の口真似をしながら、笑ってしまう。自分がひどく惨めで。


考えるのが嫌でふと左を向くと、小さな児童公園があった。


ーこんなとこに公園あったっけー


いつも学校が終わると軍隊のような足取りで予備校に向かう。


他の人より1分でも多く勉強しなきゃっていう固定観念で。


思えば周りの風景をゆっくりと見たこともなかったかもしれない。


今日はなんだか感傷的な気分だな、と自然と足は児童公園に向かっていた。











古ぼけた青いベンチに腰掛けると、目の前を小さな男の子とお母さんらしき人が通り過ぎる。


ーひろくん、夕ごはんは何食べたい?ー


ーんーとねえ…ハンバーグ!ー


その微笑ましい光景に昔の思い出がフラッシュバックする。


ー愛ちゃん、今日のご飯何食べたい?ー


ーうーんとうーんと…あい、おにいちゃんがすきなものでいいよー


思えば昔からあたしは周りの顔色ばかりうかがってた。


だからこんなツマンナイ人間になっちゃったのかな。


目頭に込み上げる熱いものに、あたしは思わず歯をくいしばった。


泣いたって何にも解決しないってとうの昔にわかってるから。











ー不良学生じゃーん、早くかえんなーー


え、あたし?


顔を上げるとそこには、金髪にピアスをして目付きの悪いヤンキー………


いや、くまさんのエプロンをした男が立っていた。