ひと夏の情事。

映画における永遠のテーマみたい。

あるいは恋愛小説の……。


地球上のいたるところで、
この夏に始まって終わる
数えきれないほどの束の間の恋。

それは終わる。

夏とともに。

それは突然に終わる。

空気に透期感が混じり始める。


本当に夏は終わったのだと、
二十歳(はたち)のクミは溜め息をついた。

あまりの呆気なさに茫然としている。

いきなり刃物で切りつけられて
傷口がさっと開き、

そこからまた血が噴き出してくる
寸前のような気分。

はっと息を吸い込んだまま
止まってしまっている状態……。

やがて、
彼女は世にも弱々しい吐息を
長々と吐きだす。