「もう帰れや。つか、何でここにおるん?」


「…観光」


俯きながら言った愛美。


「あーそう」


俺は雑巾を持って、ガラスを拭いた。


もうシカトや。


「…なぁ」


「ああ?」


「………バカ」


声が小さすぎて、何を言ったのかわからんかった。

愛美は泣きそうな顔で俺を見上げた。


なんやねん、何を言いたい?


愛美は俯きながら、どこかへと走り去った。


「蓮君、いいの?」


「ああ。それより、今日デートできる?」


「うん!」


柚に抱き着きながら、俺は愛美を思い出した。