「ケーキだけで済めばいいけどな」


兄貴がボソッと言った。
確かに、オカンならもっとよこせとでも言うかもな。


「…花をあげたらどうかな?」


「花?」


そうやな。
オカンも、意外に…女らしいというか…まぁ、花は好きやろ。


「どんなんがええかな」


「うーん。バラがいいかな」


「バラ…」


なんでもええな。
オカンやし、花ならなんでも。
柚は急いでバラを何本か包んで俺に渡した。


「ありがとう」


「頑張ってね」


「ああ」


柚の頭を撫でた。
かわいくて、抱きしめたいという感情を抑えようと俺は必死に耐えた。