その後、直子と途中まで一緒に帰ることになった。

直子の家であの写真を見てからずっと気がかりだったが、あの羽が見えない直子にはあの写真の話は出来なかった。

「でも、また同じ学校に通えるね。」

直子の言葉にはっと我にかえった。

「そ、そうだね。」

「えー?なに。あんまり嬉しくないのー?」
直子は頬を膨らまして、私をじっと見ていた。

「違うよ!すんごく嬉しいよ!」
そう言って直子に抱きついた。
二人でギャーギャー言っていると、突然直子が立ち止まった。

「ん?どうしたの?」
私は直子の顔を覗き込んだ。
「わぁ。どうしよー。」

直子の目線の先には、男の子が一人いた。

その男の子は、紛れもなく直子の家で見た写真の男の子だった。

彼は向かいから私達に近づいてくる。

「どうしよう。。声かけようかなぁ。」直子は興奮しきっている。

彼がどんどん私達に近づいてくる。

そして横を通り過ぎようとしたときだった。

私はやっぱりおかしい。

確実に私の目には彼の背中に羽が見えた。

「はぁ。。声かけれなかった。。」
直子は横で落ち込んでいた。
まさかという気持ちと恐怖感さえ抱きながら、彼の背中をおそるおそる振り返った。

彼の歩く道筋には光の粒が羽から飛び散っていた。


それはまさに漫画で見るような天使そのものだった。

彼の背中から目を離せなかった。


これが、私と春の出会いだった。

「ちょっとー。何みとれてんのよー。」
今度は直子が私の顔を覗き込んだ。

ハッと我にかえった。
「直子。。やっぱりあの人。。」
直子に羽の事言いたかったけど、やっぱり直子には見えていないようだった。

「ん?なに?」

「ううん!!やっぱりイケメンだった(笑)」

「でしょ。でしょ。あ。好きになったらダメよ。」

直子がニヒッと笑った。

私も今最大限にできる笑顔を直子に見せた。

その後、直子と別れて家に帰った。
どうやって帰ったのか、気付いた時には家の前に立っていた。
彼の後ろ姿が忘れられなかった。