那智はハッと、我に返って
緩んだ縄を手首が切れるのも
構わず、無理矢理外した。

立ち上がった途端、ふらついたが急いで智美に駆け寄る。

智美の周りには血がいっぱい溜まって、誰が見ても助からない様に見えた。


「・・智?智美!
 しっかりして!」


智美を優しく抱き上げ必死に
声を掛ける。

那智の涙が智美の頬をつたう、まるで智美の涙の様に・・。

すると、うっすらと智美の
瞼が開いた。


「智美!」


智美は力なく微笑んで、
ゆっくりと口を開いた。


「お・・姉ちゃ・・ん。」

「何?あたしは此処だよ。
 ・・・きっと助かるから、
 もう少し・・もう少しだけ
 頑張って!!」


私は静かに首を横に振った。

・・助からないということは、
私自身が一番わかっている。


「お姉ちゃ・・ん、
 私なら・・大丈・・夫。」


大丈夫な訳なんかない、それでも最期は、大好きな那智に私の笑顔を覚えていて欲しい・・。

私は今できる精一杯の笑顔を
那智に向けた。

那智は無理しないで、っと言う様に泣きながら、優しく私の
手を握る。


「ほんと・・だ・・よ?
 痛く・・ないも・・ん。
 お姉ちゃ・・んが・・無事で・・・
 良かっ・・た。お・・姉ちゃ・・ん
 ・・・・大・・・好・・きだ・・か・・ら
 笑っ・・て?わた・・しの・・分・・
 まで・・・いっ・・ぱい・・・・
 わ・・・らっ・・て・・・ね・・・・。」