「……一香」


「ふぇ?」


「その溶けまくった緩々の顔を、少しでいいから正常に戻しなさい」



 溶けまくった緩々の顔。あたしはそんな顔をしていたのか。


 とても正常とは言えない顔だったらしい。非常事態発生故、緊急避難勧告が出そうである。



「はい…」


「まだふにゃふにゃなんだけど?」


「あうう」



 このにやけ顔がクラス中に絶賛公開中なのかと思うと恥ずかしい。当然同じクラスにいる氷室君も含めて。


 だけど、自分では自分の顔が見えないため、一緒にいるあーちゃんの方が恥ずかしい思いをしていることには気づかなかった。



「本当最近幸せそうね…」


「うん!」



 確かに、幸せだった。周りが見えないほどに。