いつもの彼からしたら、想像もつかないような行動や台詞。


 感じる体温に心臓が暴れだし、優しい言葉に、驚きで止まった涙が再び出そうになる。


 温かかった。体温の低そうな氷室君だけど、とても温かかった。


 交互に緊張は結んで解かれ、程よい空気であたしを包む。




「俺――及川のことちゃんと“彼女”って思ってるから」



 こう言われてしまえば、もうあたしはおいおい泣くしかなかった。


 一時は、堪えられたのに。



 涙だけじゃない。想いも一緒に表に出て行くの。



 あたしたちはほんとはすごく不器用で。


 一生懸命、ヤケになりながらも伝えたあたしの言葉。


 不器用な氷室君がその言葉に返してくれた言葉は、あたしの頬を盛大なまでに濡らした。