「…もう良いわよ。ただ、危なくなったら逃げなさいよ」



 呆れたような目であたしを見るあーちゃんに、あたしは軽い気持ちで頷く。そうしてそのまま、彼女と共に、教室へと足を進めた。


 氷室君関係かどうかというところも、かなり疑問が残るところで。


 何かあったら、その時は逃げればいい。悠長に考える。



―――「何のほほんとしてんだろ」


―――「分かってないんじゃん?何で呼ばれてるか」


―――「王子に近づいたのが悪いんだからねー…」



 教室の一角で囁かれる言葉に、あたしは気づくはずも無く。


 いや、誰も気づかなかった。


 そのまま放課後に、なってしまった。


 あたしは、書かれたとおり武道場裏に、放課後。やって来ていた。


 呑気に構えていたつもりだったのだけれど、あたしも意外と用件は気になっていたようで、授業の内容はこれっぽっちも残っていない。



「あ、あのー……?」



 辿り着いた配意が、人が見当たらない。何やら嫌な予感がするのですが。


 きょろきょろと周囲を見回して後、俯く。


 衝撃に一足遅れて、痛みを感じる。肩を通じて、全身に広がった。


 反射的に、あたしは振り返った。



「あんた、馬鹿だね?こんなにすんなり来てくれるなんてさぁー」



 クラスでもよく目立ったいる、……言うのには抵抗を感じるけれど、割る目立ちしている…ギャル系の子。達。


 所謂、取り巻き友達。