そうして放課後になる。


 帰り道はもちろん別。言うまでもないだろう。


 あたしは普段一緒に行動しているある友達と帰るし、氷室君は一人でさっさと帰ってしまう。


 夢にまで見た女子高生ライフ、彼氏と手を繋いで駅まで下校だなんてことは、一切出来そうにない。


 正直、避けられている気がして仕方がない。


 「彼女」なのに。ずっと頭の片隅にあるのは、この事実。


 だけど何も言えないのは、その立場を失うのが嫌だからで。


 いっそ肩書きだけでもいい。氷室君の、彼女でいたい。そんな、汚い欲。


 好きだという感情は純粋にあるのに、焦りに変わってしまいそうで、怖い。



 そんなわけで、今日も定例どおり会話も交わさずに帰ることになるのだろうと、そう思っていた。その予想は、裏切られることとなる。


 いつもは挨拶と共に鞄をもって教室を出て行く彼が、残っている。


 それを見るだけで抱いてしまう、些細な期待。


 ……許して欲しい。