考えて見れば、周囲の人に知られたら、それは大変なことで。


 学年…もしかしたら、学校規模で知られているような、“王子様”。比較して、超並々のあたし。


 このアンバランス加減を考慮すれば、自分がどんな目にあうかは分かりきっている。恐ろしや。


 先生が教室へ入ってきて、来ている生徒から、出席をチェックしていく。


 あーちゃんは自分の席に戻り、氷室君は、あたしの目前を通り過ぎた。


 さり気なく、氷室君はあたしの机の上に、ノートの切れ端を置く。他の人には絶対に気付かれないだろうというほど、自然で小さな動きだった。


 氷室君でも、ノートのページを千切ったりするのか――どうでもいいようで、あたしの中では、とても大切な事実。


 加えて、彼の触れたもの、それだけでこの紙切れ一枚さえ、大切なもの。



 不自然にならないように、そっとそれを手にして。


 裏返しになったものを、表に返して見る。


 掛かった時間はあたしの緊張の分だけ長くて、それが指し示すものは、気持ちの重さ、強さ。


 自覚は更なる高ぶりを併せて、あたしを支配する。