一つ緩く釘を打たれれば、外すどころか自分でその釘を、強く打ち付けてしまう。


 ひたすら彼に夢中になっていて、他のことはどうでもよくなってしまうような。


 ……頬に違和感を感じて、視線を向ければ、あーちゃんの右手。



「また見惚れてるわね」



 仕方ないわね…そう聞こえてきそうな彼女の表情。くすくすと笑う姿は、女のあたしでも間違えれば惚れてしまいそうな、美人。



「ご、ごめんっ」



 謝っておきながらなんという弁解か、見惚れるなと言う方が無理。


 みんな平等に教室にいるというのに、他の子には絶対に見られたくないだなんて、そんな事を思ってしまう。


 あたしだけの姿であって欲しい。それが贅沢なことだと、言われても。



 そう思うだけなら、自由でしょう?


 既に彼は、他クラスを含めた沢山の女の子たちに囲まれていて。


 あーちゃん以外には、氷室君と付き合っていることは言っていない。それ程に仲のいい子は特にいなくて。


 氷室君に彼女がいない―――と思っている―――のをいいことに、周りを取り囲むのだけど。


 以前のような嫉妬心が生まれてこないのは、どうしてだろう。


 少しは湧いてくる。でもとても穏やかに。


 だからこそ更に複雑な気持ちになるという事実も、否めないのだけど、