そうして現実に戻って来すぎたあたしは、また考え出す。



「氷室君が……冷たい」



 ただ考えるのではない。砂漠にオアシスが出来そうなほどの水分量の、じめじめとした空気を放ちながら。




「そんなの、いつものことじゃないの」


「そうなんだけど……さ…」



 土曜、あれほどまでに嬉しいことが合ったから。


 一昨日のことのはずなのに、何だか遠いことのように、感じてしまった。


 そんな落ち込んだあたしに、あーちゃんがとんでも爆弾発言を一つ、投下する。



「何?まさか」



 彼女からしたら、ほんの思いつきだったのだろう。分かってはいるけれど、あたしはついうろたえる。



「キスでもされたの?」


「ち、違う……っ!」



 あたしの言動をどう汲んだら、そのような発想に辿り着くのだろう。驚きで上半身を、ばねのように跳ね上げる。ついでに首もぶんぶんと振る。