「氷室く…」


「氷室君っこの問題教えてーっ?」



 容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群。しかし自分から表に出ようとは一切せず、…それでも十二分な“オーラ”。


 自然と群がる女子。万年氷の周りに、この物理的な壁までできてしまえば、あたしは近づくことも許されない。


 彼女って、何なのだろう。時々思ってしまう。


 しかし、本当に女子に対しては、ドライの極みの彼。



「自分でやれよ」



 どんな子だろうが関係ない。女子とあれば、とにかく一蹴。


 ……一つ言っておきたいのが、男子に対しても、決して人当たりがいいわけではないということなのだけど。


 その反面、一蹴する言葉すら発して欲しくないと思うあたしは、一緒にお弁当を食べられるというたった一つの特権のために、贅沢病にかかっているらしい。


 早く離れないだろうか。彼女達をしばらく見つめる、けれど。



「そ、そっかー…」


「そうだよね……」



 残念そうに去っていくその姿には、同情の念すら抱かれて。


 もはや、あの子達と自分は、同じ立場にあるようにさえ感じてしまう。